コラム

めくるめく猫たちとの日々 Vol.5

医学博士&獣医師の佐々木先生が綴る猫のおはなし

猫めくり5回目原盤

飼い猫のルーツは? ああ猫語がわかりたい!

私は、子供の頃から猫って不思議な動物だと思ってました。

解剖学者としてもそう感じてますが、猫と人との出会いはどんなものだったのでしょうか?

遥か昔、地球が乾燥化して、森林が少なくなりサバンナ(高い草の生えている草原)が増えた頃、人々は農作物を収穫して倉庫に貯えるように。その農作物を狙ってネズミがぎょうさん集まって来ました。そんななかネズミは倉庫の中の食物を食いつくすばかりか、ペストという恐ろしい伝染病を媒介することが判明。そうして紀元前約2,000年頃、古代エジプトで、倉庫に集まって来たネズミを捕えるために、ネズミ捕りの名人である「リビアヤマネコ」を家畜化したのが飼い猫(イエネコ)の祖先というわけですね。


警戒心が強く、独立心が強い(独りよがり)といわれる猫が、どのように伴侶動物になったかは、これまた不思議中の不思議ですわ~。

猫と暮らすようになって、人は猫の不思議で神秘的な行動にいたく興味を持ったに違いありません。抱っこした時、何処からともなく「ゴロゴロ」という声が聞こえてきます。これこそ不思議で神秘的な、たまらない声ですねん。子供の頃、猫ののどから聞こえる、この「ゴロゴロ」だけでも「わ~可愛い!」と思ったものです。これも子供の頃の話ですが、猫の鳴き声「ニャー」の意味を母に尋ねると、「鳴き声は一つだけの意味でなく色んな意味があるんよ」とだけ答えてくれました。私は、「ニャーは、ニャーだよな。でもシャーは怒っているんだよな」と思ったものです。

しかしながら母が言ったように、猫の「ニャー」は、色んな感情や要求を表す事細かい意味が多種多様に含まれた「猫の言葉」でしょう。この「猫語」を理解した"猫大好きな人々"が猫を伴侶動物にしたのかもしれません。いや、または猫が人を理解したのかも!!

【猫の体のプチ知識】ゴロゴロ音のしくみって?

猫と接して、まず驚くのが猫の発するゴロゴロ音ではないでしょうか? 個体によっては、全身が震えるほどの大きさでゴロゴロ鳴いている猫もいますよね。この、猫独特のゴロゴロ音の正体は諸説あります。それもまた不思議な動物、猫ならではですね。

最近の説では、脳内の神経中枢が何らかの刺激を受けると、のどの筋肉が、声帯にある声門を開閉させる。そしてそこを通る空気が震えて音が鳴る、とのことだそうです。

ゴロゴロ音は、猫が甘えているときや、うれしいときに出す音といわれていますが、苦しいときなど、自分を落ち着かせようとして出す場合もあるようですよ。

参考:『楽しい解剖学 猫の体は不思議がいっぱい』学窓社

inu_koramu_sasaki
イラスト・文佐々木文彦 先生

大阪府立大学名誉教授、医学博士、獣医師。
愛犬はウズくん(オス/14才/ビーグル)
おもな著書は「楽しい解剖学 猫の体は不思議がいっぱい!」(学窓社)

その他のコラム