コラム

めくるめく猫たちとの日々 Vol.6

医学博士&獣医師の佐々木先生が綴る猫のおはなし

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猫の散歩はつかず離れず... 

猫は犬のような散歩は必要ないと聞きますが、私は、猫が飼い主さんと散歩しているのを幾度か見たことがあるんです。

あるとき、私が山道の狭い遊歩道をジョキングしていたら、道脇の草むらの中をササっと何か生き物が素早くこちらに向かって来たので、驚いて立ち止まると、側にいた男性が「私の猫で、一緒に散歩しているんですよ」と言いました。

散歩といっても犬のようにリードを付けているわけではなく、猫は男性と共に外出して、つかず離れずの距離で歩いて、また一緒に家に帰るのだそうです。すごいな~不思議や、よくそんなことできるな~と思ったもんです。


そんな「猫の散歩」で思い出すのは、犬のボランティア仲間の比嘉さんが以前飼っておられた猫の"ウー君"の話です。ウー君は保護猫だったそうですが、比嘉さんの家に引き取られた時から比嘉さんにベッタリ。スーパーへ買い物に行くときも「お散歩に行く?」と声をかけると、ついて来た、と言うてはりました。

山道で出会った男性と同様、前や横について歩くのではなく、道の横に止まっている車の下に隠れたりしながら、ウー君は一定の距離を置いて比嘉さんについて来るのだそう。ところが、ある場所に来るとピタリと止まり、そこで比嘉さんが帰ってくるのをひたすら待っていたとか。ある時はいつもの場所ではなく高い木の上で待っていたこともあったといいます。

猫は犬より警戒心が強いんで、飼い主さんと一緒でも周囲を警戒しながら歩いているんですね。そして猫は、縄張り(テリトリー)で生きる動物なんで、縄張りの外には出ない習性があるんです。ウー君が木の上で比嘉さんを待っていたんは、人や犬が怖かったからやと思うてます。近所で見かけた男性の例も、比嘉さんの例も、ふだんパトロールする場所を歩くぶんには、縄張りなんで猫なりの「散歩」になるんでしょう。

一方、首輪とリードをつけて公園を散歩していた猫も見かけたことがあるんですが、飼い主さんに車で連れて来られて散歩していたようで、とても不安そうでした。それは縄張りの外だったからなんですね~。

【猫の体のプチ知識】猫の爪とぎ

猫の爪とぎは、狩りや木登りのために爪を鋭利にしておくためのメンテナンスでもあるんですが、マーキングの意味も。

猫の肉球には汗腺があり、爪を研ぐ際、ここから出る分泌液でニオイ付けをして「ここは自分の縄張りだ」と主張しているのですわ。

家具などに爪とぎをされると「ひ~」と困る飼い主さんもいるでしょうが、爪とぎは大事な猫の習性なんで専用の爪とぎ器などを用意して思い切りやらせてあげてくださいね~。

参考:『楽しい解剖学 猫の体は不思議がいっぱい』学窓社

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イラスト・文佐々木文彦 先生

大阪府立大学名誉教授、医学博士、獣医師。
愛犬はウズくん(オス/14才/ビーグル)
おもな著書は「楽しい解剖学 猫の体は不思議がいっぱい!」(学窓社)

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